公共交通網がそれほど発達していないエリア(郊外エリア)では、自動車が日常の移動手段となることが多くなるでしょう.このようなエリアにある店舗が自分の立地特性を把握する時,どのくらい自動車で来る人に利用されやすいかを知ることも重要な課題となります。店舗に駐車場がない場合は,利用者は周辺の駐車場を利用することになるため、周辺「駐車場の利用しやすさ」が重要な分析となるでしょう.ここでは,ある地方都市における,自動車利用者から見た店舗の立地評価をシミュレーションにより行います.
シミュレーション対象エリア内には,公営駐車場(PP1駐車場,PP2駐車場,PP3駐車場,PP4駐車場,PP5駐車場,PP6駐車場,PP7駐車場)と,民間が運営する駐車場(PV1駐車場,PV2駐車場,PV3駐車場,PV4駐車場,PV5駐車場,PV6駐車場)及び、評価対象の店舗(店舗1~21)が存在します.地図にプロットすると以下のようになります.
このエリアの店舗を訪れる人は,上記の駐車場のうち,最も店舗から近い「空車」状態の駐車場を利用するという想定で,分析対象の店舗に利用者が訪れた場合,確率的にどのくらい駐車場を利用しやすい場所であるかをシミュレーションにより明らかにします。
シミュレーションの手順
初期条件として,全ての駐車場は,収容台数より確率的に「空車」または,「満車」の状態が与えます(Step 1).各店舗の利用者は店舗に自動車で訪れ,当該店舗から最寄の駐車場を探します(Step 2).訪れた駐車場A が空車であれば,自動車を駐め,店舗まで徒歩で向かう.駐車場A が満車の場合,利用者は満車であった駐車場A から最寄の駐車場B に移動する.駐車場B が空車の場合,利用者は駐車場B に車を駐め,駐車場B から店舗まで歩いて向かいます。駐車場B が満車であった場合,駐車場B から最寄の駐車場C を探し…(Step 3)というサイクルを,車が駐められるまで繰り返します(Step 4).このシミュレーションでは,車が駐車できるまでの移動距離は確率的に変動するため,Step 1からStep 4まで100 回繰り返し,総移動距離の平均値を,”自動車で訪れる利用者から見た”当該店舗の(立地)評価値とします.
シミュレーション結果
ランク | 店舗名 | 時間 | 時間距離(m) | |||
1 | 店舗12 | 1 | 分 | 40 | 秒 | 111.25 |
2 | 店舗6 | 1 | 分 | 41 | 秒 | 112.737 |
3 | 店舗7 | 1 | 分 | 44 | 秒 | 115.16 |
4 | 店舗8 | 1 | 分 | 49 | 秒 | 121.085 |
5 | 店舗13 | 1 | 分 | 52 | 秒 | 124.935 |
6 | 店舗14 | 1 | 分 | 57 | 秒 | 130.117 |
7 | 店舗9 | 2 | 分 | 4 | 秒 | 137.724 |
8 | 店舗4 | 2 | 分 | 6 | 秒 | 139.792 |
9 | 店舗5 | 2 | 分 | 9 | 秒 | 142.911 |
10 | 店舗10 | 2 | 分 | 16 | 秒 | 151.622 |
11 | 店舗11 | 2 | 分 | 40 | 秒 | 177.629 |
12 | 店舗15 | 3 | 分 | 2 | 秒 | 201.776 |
13 | 店舗3 | 3 | 分 | 8 | 秒 | 208.467 |
14 | 店舗2 | 3 | 分 | 29 | 秒 | 232.436 |
15 | 店舗16 | 3 | 分 | 36 | 秒 | 240.162 |
16 | 店舗17 | 5 | 分 | 15 | 秒 | 349.884 |
17 | 店舗18 | 6 | 分 | 4 | 秒 | 404.072 |
18 | 店舗20 | 6 | 分 | 27 | 秒 | 430.111 |
19 | 店舗21 | 6 | 分 | 28 | 秒 | 431.635 |
20 | 店舗19 | 7 | 分 | 14 | 秒 | 481.917 |
21 | 店舗1 | 10 | 分 | 39 | 秒 | 710.163 |
シミュレーションから,店舗の近くに駐車場がある店舗の評価が高くなることがわかります.しかしながら,駐車場の収容台数を考慮しているシミュレーションであるため,必ずしも,近傍に駐車場があるからといって評価が高くなるわけではなく.駐車場の位置と,確率的に変動する駐車場の空車率が, 店舗における駐車場の利用しやすさの評価を決定していることがわかります.